Ⅲ 説明的文章編

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│説明的文章「導入の授業」授業シナリオ                                         │
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・教材「下手人は誰だ」について
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│「下手人は誰だ」                                                             │
│①江戸時代のこと。三人の大どろぼうがいた。一人目の名前は五右衛門。二人目の名前│
│は次郎吉。三人目の名前は信之介といった。                                     │
│②ある日、江戸城から千両箱が盗まれる、という事件がおきた。三人が容疑者として取│
│り調べを受けたが、三人にはおかしな関係があったという。                       │
│③それは、五右衛門が盗みをするときには、必ず次郎吉といっしょであるということ。│
│また、次郎吉が盗みをしない日は信之介もしないということである。なお、この日江戸│
│ではこの事件しかおきていない。手口からみて、下手人は一人だということもわかって│
│いる。                                                                       │
│④さて、下手人はだれだろう。                                                 │
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1、シナリオ化にあたって考えたこと

 教材として授業の中で取り上げられている読み物教材には三つの種類がある。いうまでもなく「文学作品」「説明的文章」「随筆」である。これら三つを授業するとき、最終的な読み取りの方向はそれぞれに違っている。文学作品では作者の訴えたい「主題」を読み取ろうとするし、説明的文章なら筆者の主張する「結論」を読み取る。このようなことは授業者にとって当たり前すぎることなのかもしれないが、生徒たちは案外整理されないまま漠然と授業に臨んでいる。
 わたしは年度当初、初めて担当する生徒たちには必ずこの三種類の文章の違いについて説明する。それによってそれ以後なにを目標にして授業に臨むかが明らかになるからである。まず何を説明文といい、何を目的に読み進めていくのか、を丁寧に説明する。
 続いて「題名」に触れる。文学作品の題名は抽象的である。読者に余計な予断を与えることになるから、作者は主題をそのまま題名にするような愚は犯さない。だから、題名を読んだだけで作品の内容が予想できるということはまずない。しかし、説明的文章はそうではない。筆者の主張が明白であるから、そのメッセージを読者に伝えるために題名は具体的で分かりやすくなければならない。だから題名について検討することはつまり結論に到達するための近道でもある。文学作品にしても説明的文章にしても、読解のまず最初は題名の読み取りから、というのがわたしのスタイルである。
 最後に結論の読み取り法を文章の構造から考えさせる。全文を「前文・本文・後文」の三つに分け、結論のありかを捜す。結論は後文にある(ことが多い)ことを知るだけで、文章を読解する基礎が身につく。説明文のおもしろさとは、読み取った結論に対する自分自身の考えと他の生徒の考えを対立させ、より深い読みへ導くところにある。
 この教材「下手人は誰だ」はクイズ形式になった説明文。楽しみながら説明的文章の構造や読解の方法を学ぶことが出来る。申し訳ないことに初出がどこだったのか探せない。題名も含めて自分流に書き換えた部分もある。小学生にでも十分実践が可能な教材である。

2、授業シナリオ(Cは生徒の発言)

01 今日は説明文の授業をします。今から教材文を配りますが、その前に題名をお知らせします。

・「下手人は誰だ」を貼る。

02 この題名から考えて、今日の説明文の内容はどんなだと思いますか?

・一ひねりしているのは「下手人」。現代では「犯人」のことである。したがって時代が江戸時代らしきこと。そしてある事件が起きて、その犯人が誰であるかを問われているのだということが読める。

03 説明文というのは、題名を読むだけでその文章にはだいたいどんなことが書かれているのか、ということが読める。この文章でも同じです。実は、こんなお話なんですよ。

・教材文を配布するとともに、黒板に拡大した文を貼る。

04 やさしい文章ですから読めない漢字や分からない言葉はないと思いますが、一応わたしが読みます。

・範読する。やさしい文章だし、内容も興味深いので、生徒を引きつけられる。

05 いくつの段落から出来ていますか?番号を打ちましょう。

・簡単である。①②③④の4段落構成である。

06 説明文は全文を三つに分けて考えるのです。

・説明文の構成を簡単に説明する。
   前文・・・これからこういうことについてお話しします、という前置き。
   本文・・・前文の内容を受けて、自分の意見の正しさを証明するために、例を出し        たり実験をしたり証拠を集めたりする。
   後文・・・本文の内容を受けて、結論はこうだ、と導いていく。

07 では、この文章の①~④を三つに分けてみましょう。

・やさしい問題。ほぼ全員が前文①、本文②③、後文④と分ける。事件が始まったのが②だから、①②前文、③が本文と考える生徒もいるが、②「三人にはおかしな関係があった」③「それは」が指示語でつながっているので②と③は切れないことを説明する。

08 前文は「三人の大どろぼう」がいたという前置き。本文は事件の内容。そして後文は、隠されているけれどこの文章の結論です。普通ならこの結論部分に真犯人が書かれているはずなのですが、今日はみなさんにこの結論を出してもらおうと思います。

・クイズになっているので遊び感覚で取り組める。

09 まず、結論を出す(犯人を捜す)ために、本文から証拠を捜しましょう。参考となる事実が四つありますね。ワークシートに書き出してみてください。

・次の四つがすぐに捜せる。
 1,五右衛門が盗みをするときには、必ず次郎吉といっしょ。
 2,次郎吉が盗みをしない日は信之介もしない。
 3,この日江戸ではこの事件しかおきていない。
 4,手口からみて、犯人は一人。

10 この四つの証拠から考えて、犯人は誰だと思いますか。第一印象で答えを出します。犯人は誰ですか。ワークシートに書きなさい。

・最初から正答を書ける生徒もいるが、この段階では間違えていてもかまわない。

11 手を挙げてください。五右衛門だと思う人?次郎吉だと思う人?信之介だと思う人?

・まだ迷っている、という生徒もいるが、第一印象だから、ととにかく書かせる。合計が必ず全員の人数と合うこと。傍観者は許さない。

12 (黒板の数字を見て)結果はこうでしたが、果たして犯人はいったい誰なんでしょうね。誰かが犯人である、ということは残りの二人は無実だということになります。つまり、残りの二人の無実を証明すれば当然犯人が見つかることになります。

13 では、ワークシートの最後に、残りの二人が犯人ではないという理由をそれぞれ書きなさい。

・これを追求することがこの授業の山場となる。犯人の名前を書くことは誰にでもできる。しかし、論理的に結論に到達するためには、本文に拠って確実な証拠を捜さなくてはならない。

14 まず、三人の中で絶対にこいつだけは違う、という確信のある人は誰ですか。

・ここでも三人のどれかに手を挙げさせる。多くが五右衛門と答える。

15 五右衛門という意見が多いようですが、どうして五右衛門は無実なのですか。理由が書けている人は手を挙げてください。

・書けていない生徒は手を挙げない。書けていても手を自信がなくて挙げない生徒もいる。しかし、ここでは時間をとらない。それほど難解な問題ではないからである。わからない生徒には教えればいい。

16 では・・くん。

・指名して答えさせる。

「五右衛門は必ず次郎吉といっしょに盗みをするが、犯人は一人だということがわかっているから、五右衛門は犯人ではない」

17 その通りです。五右衛門は気が小さいのでしょうかね。次郎吉がいないと盗みができない頼りないどろぼうなんですねえ。

・ここで伏線となっているのが次郎吉である。五右衛門は必ず次郎吉といっしょに盗みをするとは書かれているけど、次郎吉はそうではない。それにわざと触れないでおく。そのほうが問題が複雑になって、解答が難しくなる。

18 これで一人消えました。だから、残された可能性は・・・。

C 二人。

19 そうです。

・三者択一の問題をまず二者択一に減らすことは、よりわかりやすい授業のための指導技術の一つである。

20 さて、それでは残りは二人となりました。どちらかが犯人で、どちらかは無実です。
ここでもう一度皆さんの意見を聞きましょう。次郎吉だと思う人?信之介だと思う人?

・人数を数える。次郎吉が犯人だという意見が多い。しかし、はっきりとした根拠を探せているかは疑わしい。そこで、

21 では、それぞれの意見の人、絶対に自分の方が正しい。なぜならこんな理由があるからだ、という証拠を文中から見つけてワークシートに書いてください。

・解決へのヒントは、
 ①次郎吉が盗みをしない日は信之介もしない
 ②この日江戸ではこの事件しかおきていない
 ③手口からみて、下手人は一人
  の3つ。

・多くの生徒は根拠を探せていない。さらに揺さぶる。

22 もし、あなた方が検察官なら、有罪を勝ち取るためにどうしますか?これを言えば絶対に「有罪」間違いなし、という決定的な根拠を示して下さい。

・こう言っても、なかなか難しいことは承知。そこでグループで考えさせる。

23 では、次郎吉が下手人だと思う人は立ちなさい。今からグループ分けをします。

・次郎吉派をその場で小さなグループに分ける。リーダーになりそうな生徒を指名し、そこに他の生徒を集める。信之介派も同様に行う。

24 指定されたリーダーのところに集まって、会議をして下さい。(立ったまま行うので、これを「井戸端会議」という) 根拠が見つかったらホワイトボードを取りに来てください。時間は○分です。

・かなり活気のある会議となる。しかし、決定的な根拠、となると難しいのである。

25 はい、タイムアップ。リーダーさんは順に前に出て説明して下さい。まず、少数派の信之介派からいきましょう。

・こうした対立をさせるときは少数派から行う。各グループがホワイトボードを使って説明。

26 どうでしたか?なるほどと納得できましたか。最後に聞きます。次郎吉だと思う人?信之介だと思う人? 

・ここで全員が正答にたどり着ければそれでよい。しかし、理解できていない生徒のために解説する。

27 まず、信之介が有罪だという意見の根拠は「五右衛門が盗みをするときには、必ず次郎吉といっしょ」でしたが、これは否定されましたね。五右衛門は必ず次郎吉といっしょに盗みをするけれど、次郎吉が必ず五右衛門といっしょに盗みをするとは書かれていない。次郎吉は一人でも盗みをする可能性はある。だから次郎吉が下手人であることは考えられるのです。

28 次に、次郎吉が有罪だという意見の根拠は「次郎吉が盗みをしない日は信之介もしない」でしたね。次郎吉が無罪なら信之介も絶対に無罪。これはわかりましたね。では、次郎吉が有罪であるとしたら、信之介はどうですか?もし、信之介が有罪なら、この日に事件が二つあるか、下手人が2人いたことになって、条件に合わなくなってしまう。だから・・・。

C 下手人は次郎吉。

29 そう。図にすると次のようになります。
                                                                              
│      次郎吉      │      無罪       │      信之介      │       無罪      │ 
│      次郎吉     │      有罪       │      信之介     │有罪か無罪か     │ 

30 このように、説明文というのは、文中に書かれた事実の中から、筆者が読者に対して訴えたいことをしっかり読み取って、その結論について自分の意見を持ち、さらに同級生たちの意見を聞いて、自分の意見を再確認する、というのが勉強の仕方です。わかってくれたでしょうか。

31 では、今日の授業で学んだことを簡単に文章にまとめましょう。

・授業の最後に文章としてまとめさせること。書くことによって考えは確かなものになっていく。書く力はこうした日々の積み重ねによって身につくのである。

 

 


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│説明的文章「百二十年の孤独」授業シナリオ                                     │
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・教材「百二十年の孤独」について

 東京書籍中学一年の教材。
 セーシェルゾウガメのマリオンは探検家によってモーリシャス島に連れてこられた。かつてモーリシャス島にもゾウガメはいたが、マリオンが来る前に絶滅していた。その後、インド洋のゾウガメは十二種すべてが人間の行為によって絶滅し、マリオンはたった一頭になって百二十年生き続けた。

1、シナリオ化にあたって考えたこと

 説明的文章(説明文)についてのわたしの見解。
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│筆者が、あるメッセージを読者に対して訴えようとする場合、それを直接的に(文学的│
│技法を使わずに)表現することにより説得を試みた文章。                         │
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 教室で説明的文章を学ぶことの意味。
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│①筆者が訴えようとするメッセージを正しく読み取ること。                       │
│②筆者が読者を納得させるためにどのような方法で説得を試みているかを分析し、その│
│論拠の正しさ(時に誤り)を読み取ること。                                     │
│③筆者の主張に対して、自分なりの意見を持ち、文章に表せること。               │
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 わたしの説明的文章の指導過程は次のようである。
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│ 題名読み→ 主題読み(仮)→ 分析読み→ 構造読み→ 主題読み→ 意見文   │
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 この授業方法はわたしのオリジナルではない。いくつかの研究会の手法を取捨選択し、融合させたものである。特に大きな影響をうけたのは「科学的『読みの授業』研究会」と市毛勝雄先生。参考になった図書は『説明文をきらいにしない授業のヒント』(「小学校国語科学習指導の研究3」東洋館出版社)である。今回の授業(一時間)では、説明的文章の授業の流れをわかりやすく理解してもらうため、次のように若干の工夫をした。
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│ 題名読み→ 分析読み(①のみ)→ 主題読み                                 │
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 この授業でつけさせたい学力は、
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│関心・意欲・・・進んで次を学ぼうとする。                                     │
│話す・聞く・・・書いたことを発表する。意見を真剣に聞く。                     │
│書く・・・・・・学んだことを自分の意見としてまとめる。                       │
│読む (音読)・・内容を把握しながら音読する。                                │
│   (読解)・・段落の内容、文章の主題を読み取る。                          │
│言語事項・・・・言葉の意味、読み、主述の関係を理解する。                     │
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 この授業ではパワーポイントを使った。画像を取り込んだり、ワークシートと対応させるなどの工夫をした。

2、授業シナリオ

・机上には筆記用具だけでいい。ワークシートを配布。

01 渡ったら、名前を書きなさい。

・マグネットスクリーンに題名の「百二十年の孤独」を表示させる。

02 これ「百二十年の孤独」が題名。今からこの教材について授業するんだけど、読めない漢字はありますか。

・「孤独」が読めないかもしれない。教える。

03 「百二十年」ってどれくらいの時間?長いの?短いの?君らの年齢は?その十倍。

・年齢との比較によって、百二十年がかなり長い時間であることを意識させる。

04 「孤独」の意味は?

C:「ひとりぼっち」「たった一人」。

05 どんなイメージ?孤独だと?

C:「つらい」「さびしい」

06 じゃあ、つなぎ合わせてみると、「長い時間たった一人でつらい、さびしい」って意味になるね。では今日の第一問。この題名から考えて、この文章は「誰の、どんな話」だと思う?頭に浮かんだことを短い文で書いてみて。正解は期待しないから、気楽にね。

・かなり無茶な発問であることは承知している。事前に読んでないかぎりわかるはずがないし、わからなくていい。これから学習する事への興味、関心を高めるための発問である。ただし、抽象性の高い文学作品とは違い、説明的文章の題名には内容を類推できるものが多い。全くのでたらめ、というわけでもない。机間巡視で確認する。なにか書けた生徒がいたら、そういう柔軟さをしっかり誉めてやる。万一事前に読んでいて、正答があったとしてもそれは取り上げない。

07 じゃあ、次のシートにいくね。( )に入る言葉を予想しなさい。「その( )は、世界で一番孤独だった」 ん?この( )にどんな言葉が入る?口に出しちゃダメだよ。プリントに書き入れてみて。思いつきでいいよ。

・「人」とか、06の発問よりは書けるだろうが、まだ当てずっぽうである。それでいい。もちろん「カメ」があっても取り上げない。

08 次、「120年間にわたり、ただ一頭きりで種を代表してきたのだから」かなりヒントになる言葉出てきたね。「一頭」とあるから、人間じゃないよね。百二十年も生きている、というのもヒント。答えは書き換えていいよ。

09 「気の遠くなるような孤独に耐えた( )の名は、マリオンという」さあ、マリオンという名前も出てきたよ。最終チャンス。なんだろう?

・これ以上引っ張るのは時間の無駄。さっさと正答にいく。次の画像。

10 実はこれ。

・ここがパワーポイントの見せ所の一つ。映像は生徒の興味関心を惹く。飽きさせない授業の工夫。

11 カメだったんだね。でもこれ、ただのカメじゃないね。(「ゾウガメ」という言葉が出るかもしれない。「よく知ってるね」と誉める)「百二十年間もたった一頭だけで生きてきたゾウガメのお話」ってどんなんだろうね。さあ、読んでみようか。教科書○○ページを開いて。

・これで、生徒の興味はしっかり本文に惹きつけられる。

12 「百二十年の孤独」

・しっかり、はっきりした声で読む。ここからが授業本番。

13 もう一度最初の三行を読むよ。

・丁寧に範読する。

14 意味の分からない言葉を確認しようか。

・「~わたり」「~きり」「種を代表」「気の遠くなる」をそれぞれ別の言葉に置き換えさせる。時間はとらない。わからないことは教える。

15 では、次はみんなに読んでもらう。全員起立。わたしのスピードと同じスピードで読んでごらん。ただし、いい加減にならないようにね。

・特に説明文の音読は速読でなければならない。たどたどしい読みからは読解力は育たない。すらすら読めてこそ理解につながる。

16 さて、この三行はなにについて書かれている文章ですか。一言で答えてごらん。答えhァプリントに書くんだよ。

・説明文の内容の読み取りの基礎である。なんのことについて書いているかを一言で答えさせる。すべての段落でうまくいくわけではないが、有効な方法の一つである。

・生徒に発問をする場合、一問一答でもいい場合もたくさんある。しかし、生徒一人ひとりの考えを大切にしたい場合、わたしは、必ず一度書かせて答えを求める。そのことによって課題がすべての生徒のものになる。

17 「マリオン」でいいね。どのカメでもいいわけではなくて、マリオンのことについて書かれているわけだから。

・机間巡視で生徒の解答の傾向をつかむ。わたしは授業中、めまぐるしく教室を回る。そして、生徒がどのようにつまずき、どのように理解しているかを把握する。だから、書かせることが重要なのである。頭の中は覗けない。

18 この三行を読んで、分かったことを一つ、疑問に思ったことを一つ書きなさい。

・ワークシートに従って書かせる。
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│わかったこと:この文章は(マリオン)についての文章である。                   │
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│疑問に思ったこと:なぜ(マリオン)は(百二十年間)も(孤独)だったのか?     │
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・学習初期の生徒たちには、こうして穴埋め問題にして解答を誘導してやる。馴れてくれば誘導はいらなくなる。

19 この疑問の答えが、次から読むところに書かれているはずなんだよね。なぜ百二十年間も孤独だったのか、その理由を知りたいね。

・これからの授業の目当てをはっきり示している。生徒は何をやっていいか明らかだから、授業が受け身にならない。

20 今から全文を読むんだけど、その前に、この三行の段落に①と番号を打とう。こんな風に頭が一文字下がっている段落を?形式段落、というんだよね。次の「インド洋・・・」というところから、段落に番号を打っていこう。

・全三十段落になる。打ち間違いのないように指導を入れる。

21 ではCDを聴いてもらおうか。君らはさっきの答えがどこにあるか、よーく聴いていてよ。もし見つけたら段落に印をしておこうか。

・この指示によって、CDを聴く時の集中力は全然違う。

・ここから内容についての発問をする。生徒は一度CDを聴いただけである。しかし、一度聴いただけでもこの程度の発問には答えられなければならない。これは「一読総合法」に近い授業法かもしれない。

22 なぜ百二十年間も孤独だったのか、その理由が書かれてある段落、見つけたかな?見つけた人は段落番号をワークシートに書きなさい。

・解は⑬。生徒の解がどれくらい分かれるか予想できない。もし解が分かれたら、根拠となる文に線を引かせることによって理解させる。

23 次の問いだよ。では、なぜ十二種のゾウガメが滅び去ったのですか?その理由はどこに書いてある?二つさがしてワークシートに番号を書きなさい。

・解は⑮(+⑯)と㉑。

24 ワークシートに従ってまとめてみよう。
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│⑮⑯:(どん欲)な(人類)が(新鮮な蛋白質)として(乱獲)したから           │
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│㉑:(船)が運んできた(ネズミ)などが(卵)を(食い荒ら)したから            │
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25 では最後の問題。この文章で、筆者は読者に何を訴えたいんだと思う?いま、考えつくことだけでいいから、ワークシートにまとめてみよう。長く書く必要はないよ。そのマスに入るだけで十分。

わたしは、
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│筆者は                          ということを訴えたい│
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のだと思う。

・生徒に意見文を書かせると、主語と述語がずれてしまうことがよくある。特に一つの文のなかに主語や述語が二つ以上あると混乱する。このようなドリルを使って意図的に馴れさせていくことが大切である。

・説明的文章の学習は「書くこと」で完結する。読み取ったことを自分自身の言葉で書かせることによって思考力が育つ。書かせる量と内容は成長過程によって当然変わる。このケースでも、初回の読みの場合なら「人間のせいで多くの動物や植物が絶滅した」という表面の読み取りだけでも十分である。
 わたしの考えるよい授業とは、授業の最初と最後で生徒が望ましく向上的に変容したかどうかである。楽しくても、学力として定着しなければ授業としての価値はない。もちろん学力がついても苦痛であればどうかと思うが。