Profile

著者
桂 俊哉(かつら としや)

1956年、和歌山県生まれ。
和歌山大学大学院教育学専修国語教育専攻修了。
和歌山県みなべ町立南部中学校教諭を振り出しに、
日高地方、田辺市の中学校を歴任。
この間、和歌山大学教育学部「中等国語科教育法」非常勤講師。
2016年、田辺市中辺路中学校長を最後に退職。
現和歌山大学教育学部客員教授・近畿大学九州短期大学非常勤講師。
主な論考に、『「初めて読む」を生かす授業』(共著・素人社)2006
『中学校国語科教育授業実践資料集』(共著・ニチブン)2009
「詩「うつろなるときのうた」で授業する」(『鍛える国語教室』第17号・明治図書)2002
「授業スタイルの改善」(『授業のネタ教材開発』6月号・明治図書)2003
「「未来予想」を取り入れた文学の授業」(和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要No,11)2005
「短歌を味わう」(『かけはし』4/5月号・東京書籍)2009

 私が特に影響を受け、師と仰いでいるのは野口芳宏氏(元北海道教育大学函館校教授)である。まだ若い頃に、氏の著作に触れ、大きな感銘を受けた。当時、氏は千葉県の小学校の教頭であったが、氏の著作は具体的で示唆に富んでいた。それ以降、氏の著作を読みあさり、氏の講演会や授業研究会が開かれる場を探しては参加してきた。野口氏に限らず、新しい情報や刺激を得るために、精力的に大阪や東京に出かけ、全国レベルの研究会に参加してきた。科学的読みの授業研究会、日本言語技術教育学会が主な所属団体であった。 最も大切にしてきたのは、「経験はただ積み重ねるだけでは力とならない。常に整理し、記録することで本当の力となる」という野口氏の言葉である。その言葉に従い、毎日の授業をどのように充実させ、生徒に学力をつけるために努力したかを常に記録して、公表した。授業の記録や、教材の工夫などを当初はホームページに、そして後には和歌山大学の研究会で発表してきた。そうやって他人の目に晒し、批判されることによって、私自身の授業が鍛えられた。
 授業実践者としての視点から、研究者の視点を併せ持つ事ができるようになったのは、和歌山大学大学院への現職教員としての入学がきっかけである。和歌山大学では奥野忠昭氏に師事した。氏の提唱する「「初めて読む」ことによる読解指導」に強く影響をうけた。私自身は授業の中で時に生じる「対比・対立」が授業を活性化させ、学力をつけるのに効果的であることを経験的に知っていたが、それを学問的なものにまとめあげることができたのは氏の指導によるものである。「対比・対立」を授業の中のハプニングとしてではなく、あらかじめ仕組まれた工夫としてどのように生かすか、という研究から、「未来予想」という独自の授業法が生まれた。現在は、授業力を向上させるための手段として、授業をシナリオ化することを実践し、提唱している。